こんな騎手シリーズ
私は「こんな騎手シリーズ」などで、かなり中舘騎手を褒め倒してきた。
彼は、決して派手な乗り役とはいえないが、自分というものを知り尽くし、
勝てる舞台を選んでキッチリと成績を残すプロ中のプロであると.:…。腕のあ
る騎手が集中する中央場所ではなく、あえて福島や新潟などの3場目ローカル
を狙って勝ち星を重ねていくのは、ある意味ビジネスの王道でもあるからだ。
そう、中舘英二はすごい人なのである。
さあ、ここからは彼のことを親しみを込めて「エージ君」と呼ばせてもらおう。
エージ君はキャラクターの立っている人である。
マンガにでてきそうな顔、仕草、行動などは、な
ぜもっと人気がでないのかが不思議だ。女の子が
キャーキャーと集まってきてもいいのに……。お
笑い全盛のご時勢で、いまだにエージ君の評価は
不当に低いと私は思っているくらいだ。
しかし最近になってエージ君が地方場所ばかりに出向くのには、何かほかの理
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‘‘電波に弱い,,中舘英二騎手
{鯛かあるのでは葱いがと畷かれるようになった。
これはえらいことだ。エージ君ウオッチャーの私にとっては、これは聞き捨
てならぬウワサである。もし「エージ君は地方に女をたくさんつくっていた?」
なんてことになればイメージダウン必至。あの純朴そうな顔でプレイボーイだ
ったりしたら、すごくいやだな-と思っていた。でもエージ君は期待を裏切るような人ではなかった。
彼が地方ばかりにいく理由とは、逆に普通の人間にはまったく理解のできな
いものだったのだ……。
携帯電話が普及して、ほとんどのジョッキーが持つようになると、調教師か
ら騎手各々への騎乗依頼も、携帯電話で直接やる時代に突入していった。
ある日、厩舎の前で関東の大物調教師が怒っているのを目撃する。
「なんだよ中舘。携帯の電源ずっと切ってやがる」
エージ君へ騎乗を頼もうと思って電話をしているのに全然通じないそうだ。
そういえばほかの騎手が「中舘さんの携帯は電源いつもオフですから」といっ
ていた。しばらくして調教師は「もう待てなどといってほかの騎手に馬をま
わしてしまった。それをあとで聞いたエージ君は大慌て。先生のところへ行っ
て、これからはいつも電源を入れておきますと謝った。ところがそれ以降もち
ょくちょくそんなことがあったので、中舘は騎手のなかではかなり早い時期に、
騎乗スケジュール管理のマネージャーを採用したほどだ。
でもエージ君はなぜ、いつも携帯の電源を切っていたのか?エージ君とよく行動をともにするという騎手から証言を得ることが
できた。
「エージさんは、どうも携帯電話が嫌いみたいです
ね。なんか話していると頭が痛くなるとかいってたよ
うな気がします。メールもやらないみたいです。それ
からほかにも電気製品全般に弱いそうです。パソコンなんかもってのほかでしょう」
さすがエージ君、デジタル嫌いなのだ。
ある日、中山競馬場で……。
「なんか今日、いつもと違わない?」
とエージ君が頭を押さえている。
「どうしたんすか、具合いでも悪いんですか?」
エージ君は顔色が悪いようだ。騎乗の合間もなんだかボーッと座っている。
いつも以上にボーッとしているのだ。一応、すべての予定騎乗は乗ったには乗ったが「やっぱり中山は僕には合わない」みたいなことをいって、そそくさと
競馬場をあとにしたそうだ。
あとになってわかったことなのだが、実はこの日から中山競馬場には、カラ
スやハトが入り込んでこないようにするために、ある種の鳥だけが嫌がる波長
の弱い電磁波をスタンドの一番上についているアンテナから流し始めた初日だった。
どうもエージ君は、動翻》並みの鋭い露毒性アンテナを持っているようなのだ。
エージ君は以前からローカル好きだったことは認めるが、烏避けアンテナが
設置されて以降は、知らないうちに体のなかにある危険察知装置が起動し、さ
らにメイン会場を避けるようになったと一部ではまことしやかにウワサされているのである。